ジブリ映画の場面写真の無償提供に見る著作権とは
アニメ映画「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」で有名なアニメスタジオ「スタジオジブリ」が先日、自らの作品の場面写真の公開を開始した。
ジブリを宮崎駿監督と二人三脚で育て上げた鈴木敏夫・代表取締役プロデューサーによると作品の一般公開に踏み切った理由について。
「著作物の最大の不幸は忘れ去られることだ」
「著作権の使い方を間違えると作品が消えてしまう」
という危機感があったと述べた。
ジブリ作品と言えば国民的作品と言われるほど認知度も高いのに忘れ去られるとはどういう事なのか。
実は2008年に「デビルマン」で有名な漫画家、永井豪氏率いるダイナミックプロも似たような事を述べている。
「人の目に触れないものは忘れられるだけ」
<著作権で縛りすぎるとコンテンツが死ぬ?>
鈴木氏はTOKYO FMなどで放送中の番組で「ジブリと著作権」をテーマにトークしており、その中で「著作物はいろんな人が使いやすい環境に本来あるべき」
という持論を語り、法律で著作者を守ることも大事だが、ライセンスビジネスとは別の観点から著作物は、誰かが読んで、見て、聞いてくれないと意味がない。常に世の中の人に楽しんでもらい、話題に上がる、それが一番重要。著作物は作った人のものだけど、作った人だけのものじゃない」と述べている。
また、それらの発言の引用元であるジブリ発行の月刊誌「熱風」8月号「ジブリと著作権」と題する座談会の記事によると、ジブリの顧問弁護士である村瀬拓男氏は。
(以下引用)
村瀬「…今、ほんとに作品って山のように世の中に溢れていて、あっという間に忘れ去られていくじゃないですか…」
鈴木「僕が好きだった作家で言うと、石坂洋次郎がそうですよね。すごい流行作家で、いっぱい書いていた。20年ぐらいそれを続けるんだけれど亡くなった後、一瞬のうちに忘れ去られちゃって、もう今や彼の本を読むのは難しい状況が生まれているんです。それは辛いよね…」
(以上引用、敬称略)
村瀬氏によると、著作物は誰かが見たり読んだり聞いたりして面白がったり共感したり話題にしてくれないと何の意味も無く、今の著作権法上の今の法律上のルールで微妙な所から目くじら立て始めたら、作品の命を長らえさせるという事に対して逆効果になる危険性があると述べた。
鈴木氏も、法が著作物を守ってるつもりが逆に邪魔している。アニメ映画「火垂るの墓」の原作者である野坂昭如氏の著書も著作権の関係で現在は読むのが困難になってるという。
このように著作権に縛られて作品の露出が減ると、次から次へと新たなコンテンツが生まれる現代ではすぐに埋もれて忘れ去られる危機感が著作者側がらも現れている。
著作権で作品や著作者を守る事は重要だが、それによって誰もが利用できなくなって作品の露出が減り、結果的に忘れ去られるのは本末転倒である。
権利を厳格に行使するよりも、権利を壊さない程度に二次利用、二次創作を認めるなどの寛容さも重要になってくるだろう。
なお、2018年に「TPP関連法案国会審議」に基づく同法の改正案が成立して著作権侵害に対する非親告罪化規定が施行されたが、現在の日本では二次創作で作品を毀損したり多額の利益を得ない限り、大半は著作者によって黙認されているのが現状である。
作品は誰のためにあるのか。
著作権利者、作品のファンの共存共栄こそが作品を長く保たせる事では無いのだろうか。
もののけ姫が忘れ去られたらモロの君も怒り心頭になるかもしれない。
<参考リンク>
ジブリの大転換なぜ? 作品守らない著作権
https://this.kiji.is/682851815988708449?c=39546741839462401
「著作権を緩めないと作品消えちゃう」ジブリ画像400枚、無償提供開始
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20201010-OYT1T50176/
スタジオジブリ、人気作品の場面写真400枚を無料提供
http://animationbusiness.info/archives/10365
スタジオジブリ作品、場面写真の提供開始の裏に「消える」危機感
https://news.yahoo.co.jp/articles/04d9edde1fb8eb241844e43e8ff6e82513e7f803
「人の目に触れないコンテンツは忘れられる」――永井豪のダイナミックプロに聞く著作権
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0803/26/news112.html