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スペインで多発する美術品の修復ミス

スペインの都市パレンシアの銀行の外壁にある彫刻の女性像が、素人の修復家によって見るも無残な落書きのような顔にされ修復不可能なほどのダメージを受けたという。

 

bijutsutecho.com

これはひどい

 

こうした修復ミスは一度や二度だけでは無い。

 

2012年にも画家エリアス・ガルシア・マルティネスによって、スペイン北東部の町ボルハ市の教会の柱に描かれていたイバラの冠を頂くイエス・キリストの姿を描写したフレスコ画「この人を見よ」の修復を、当時80歳の女性が手掛けてまるでサルのような絵にされてしまった。その結果、同作は「サルのキリスト」として世界的に知られることとなった。

 

当初猛批判を食らったこの絵だが、教会にこの絵を見ようと観光客が訪れるようになると、教会を運営する慈善財団は入場料を取るようになり、さらに便乗商品まで販売され、結果この女性は著作権収入まで得てしまった。

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また、2018年にも北部ナバラ州の教会では、木彫りの聖ジョージの彫刻の清掃を美術教師に任せた結果、ピンクの顔と明るい色の鎧とまるでおもちゃのフィギュアのように変えられた。こちらはその後の再修復で原状回復したという。

 

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さらに2020年には、バロック時代の画家バルトロメ・エステバン・ムリーリョの作品の聖母マリアを描いた「無原罪の御宿り」の複製画が、家具修復業者の修復によってオリジナルには似ても似つかないものになってしまった。

 

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何故スペインでこうした事が多発してるのか。

 

一つは、スペインの景気が悪く、保全・修復の専門家に修復依頼すると高額になる事から、安易に安価な素人業者を選んでしまうという経済的理由と歴史遺産や美術品に対する意識の低さ。さらに、プロの専門家もこうした理由で仕事にありつけなくなっている為、海外へ拠点を移したり廃業したりせざるを得なくなっている。その結果、この分野のビジネス構造は現在、弱体化しており、保全・修復の専門職はこの先スペイン全土で消滅する深刻なリスクにさらされているという。

 

また、スペインの法律の不備も問題で、スペインの芸術保存・修復協会の広報を務めるフェルナンド・カレラ氏は、スペインの歴史遺産の管理に問題があり、概して規則順守が徹底されておらず芸術作品の修復が必要な場合に「誰が介入すべきか」が、法律で明確に規定されていない点を指摘されている。

 


ちなみに日本でも似たような事例が日光東照宮の三猿像で起きているが、こちらは修復のたびに毎回顔が変わっており「仕様」だという。

withnews.jp

 

というのも、三猿は建造物の一部とみなしており、建造物は一旦、彩色を掻き落としてから塗り直すという対応を取っているためで、基本的に日本の美術品の修復は作品そのものに手を加えるということは原則やらない劣化防止措置以外はやらないので、このような対応になったとの事。

 

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このような美術品の管理は国を挙げて支援をしない限り、経済的理由や歴史遺産の保全の意識低下によって美術品修復での破壊行為は今後も増えていくと思われる。